高山烏龍茶、東方美人、鉄観音。同じ台湾茶でも、香りや味わいはそれぞれまったく異なります。その違いを生んでいるのは、産地や品種だけではありません。茶葉が完成するまでの「製茶工程」こそが、香りと味わいを大きく左右しています。
この記事では、台湾茶がどのような工程を経て私たちの手元に届くのかを、私たちが実際に台湾の製茶現場で見聞きした経験も交えながらご紹介します。
台湾茶は、茶摘みをしたらすぐ完成するわけではない
台湾茶は、茶葉を摘んですぐにお茶になるわけではありません。烏龍茶、紅茶、各種のお茶によって異なりますが、次のような工程を経て完成します。
茶摘み → 萎凋(いちょう) → 揺青・攪拌 → 殺青(さっせい) → 揉捻・団揉 → 乾燥・焙煎
発酵度や仕上げの形によって、工程の進め方には違いがあります。
大切なのは工程の順番を覚えることではなく、それぞれの工程が、最終的な香りや味わい、茶葉の形につながっているという点です。

台湾茶の製茶工程を順番に見てみる
茶摘み|すべては茶葉を摘むところから
台湾茶の茶摘みでは、新芽とその下の葉を一緒に摘む「一芯二葉」「一芯三葉」という考え方が基本とされています。この時点での茶葉の状態が、その後の製茶全体に影響します。
私たちが現地の農家から聞いた話では、雨が降ったあと、少し時間が経って茶葉の表面が乾いてきた頃に摘む茶葉は、味と香りがしっかりしているとされているそうです。一方で雨が続きすぎると茶葉が育ちすぎてしまい、一芯二葉・一芯三葉のかたちで摘みにくくなることもあるといいます。天候と茶摘みのタイミングは、密接に関わっているようです。
萎凋とは?水分を抜き、香りをつくる最初の工程
萎凋とは、摘み取った茶葉から水分を適度に抜き、茶葉の状態を次の工程へ整える製茶工程です。
日光や室内で茶葉を乾燥させ水分を飛ばし、後の香りの土台をつくります。どの程度まで萎凋させるかによって、仕上がりの香りは大きく変わります。
ここで重要なのは、単純に「決められた時間だけ乾燥させる」作業ではないという点です。私たちが見てきた範囲では、**茶師は茶葉の香りを実際に確認しながら、次の攪拌工程へ進むタイミングを判断しています。**どのような香りに達したら次へ進むのかは、長年の経験によるところが大きいようです。

揺青・攪拌|茶葉を丁寧に動かし、香りを引き出す
揺青・攪拌は、茶葉を丁寧に揺らして軽い摩擦を与える工程です。強く乱暴に混ぜるものではなく、茶葉に負担をかけすぎないよう丁寧に動かすことがポイントとされています。
萎凋工程と同じように、「何分攪拌すれば完成」という単純な作業ではないという点です。私たちが見てきた農家では、その日の茶葉の香りを実際に嗅ぎながら、揺らす回数やタイミングをそのつど判断しているという様子が印象的でした。目指す香りの基準に達したと感じたところで、工程を次へ進めます。
台湾茶づくりの現場では、24時間体制で茶葉を見守ることもある 茶農家によって異なりますが、製茶の時期には、香りの変化を見逃さないよう交代制で、夜通し茶葉を確認し続ける農家もあります。すべての農家が夜中まで作業するわけではありませんが、茶苑 CHA-ENが仕入れをしている農家の中には、深夜も茶葉と向き合っているところもありました。そして、そうした細やかな確認を続けている農家の中には、台湾茶のコンテストで入賞を重ねているところもあります。これは「夜通し作業すれば必ず高品質になる」ということではなく、茶葉の状態を細かく見極めながら製茶する姿勢であり、品位ある茶葉となりえるポリシーであると感じます。
茶葉の育ち方はその年によって異なるため、工程をすべて機械任せにしてしまうと、年ごとの味わいや香りにブレが出やすくなります。だからこそ、茶師の判断が欠かせないのだと感じています。

殺青とは?茶葉の変化を止める工程
殺青とは、茶葉に熱を加えることで酵素の働きを止め、それ以上の変化を止める工程です。
萎凋や揺青・攪拌によって進んだ変化を、狙ったところで止めるための重要な工程です。これにより、その後の茶葉の香りや色合いの方向性が決まります。
揉捻・団揉|茶葉の形をつくる
揉捻は茶葉を揉んで組織を軽く壊し、成分が抽出されやすい状態に整える"烏龍茶のみで行われる"工程です。台湾茶に多く見られる球状の茶葉は、この後の「団揉」という工程で布に包み、力を加えながら丸めることで生まれます。
台湾茶には、揉捻・団揉によって球状に仕上げられるものがあります。なぜ台湾茶にはこのような丸い形が多いのでしょうか。団揉の工程と茶葉の形については、後日投稿予定の別の投稿記事で詳しくご紹介します。
乾燥・焙煎|最後に香りと味わいを整える
最後に茶葉を乾燥させ、必要に応じて焙煎を行います。ここで大切なのは、発酵度と焙煎度は別のものだということです。
| 主に決まるもの | 台湾茶の例 | |
|---|---|---|
| 発酵度 | お茶の種類・香りや味わいの方向性 | 四季春・文山包種(軽発酵)、東方美人(高発酵) |
| 焙煎度 | コクとキレの強さ | 凍頂、鉄観音(しっかり焙煎) |
発酵度・焙煎度についても、奥が深いテーマのため、別の記事で解説予定です。
製茶は、決められた作業をこなすことではない
ここまでご紹介してきたように、台湾茶づくりは「時間・温度・回数」を機械的にこなす作業ではありません。茶葉の状態はその年、その日によって変わるため、香りを嗅ぎ、状態を見極めながら工程を進める必要があります。この積み重ねが、同じ品種であっても農家ごとに異なる香りや味わいを生み出しているのだと、私たちは感じています。
その違いは、飲むときにも感じられる
製茶工程の違いは、実際に飲んだときの感覚にもつながっています。口の中にふわりと広がる香り、飲み込んだあとにじんわりと感じる回甘(フェイガン)、そして口に運ぶ前から漂う香りの深み。こうした要素は、記憶に残る一杯かどうかにも関わってくるように思います。もちろん、「回甘があるから必ず高品質」というわけではありませんが、製茶の工程を知ったうえで飲むと、いつもの一杯から感じ取れるものが少し変わってくるかもしれません。
私たち茶苑 CHA-ENは、台湾各地の茶葉を、その香りや味わいを大切にしながらお届けしています。今回ご紹介した工程を、ぜひ少しでも頭の片隅に置いていただき、お茶選びに役立てていだけれればと存じます。また、これらの製茶方法に思いを馳せながら、台湾茶の時間をお楽しみください。
よくある質問
Q1. 台湾茶はどのような工程で作られますか? 茶摘み→萎凋→揺青・攪拌→殺青→揉捻・団揉→乾燥・焙煎という流れが基本です。お茶の種類によって工程の進め方は異なります。
Q2. 台湾茶の「発酵」とは何ですか? 台湾茶でいう「発酵」は、納豆や漬物のような微生物による発酵とは異なり、茶葉自身が持つ酵素の働きによって酸化が進むことを指します。萎凋や揺青の過程でこの酸化がどの程度進むかによって、お茶の種類や香りの方向性が変わります。
Q3. 萎凋と揺青は何が違いますか? 萎凋は茶葉の水分を抜いて状態を整える工程、揺青は茶葉を動かして摩擦を起こし、香りの変化を促す工程です。
Q4. なぜ台湾茶には丸い茶葉が多いのですか? 団揉という工程で茶葉を布に包んで丸める仕上げが多いためです。詳しくは追って投稿予定の関連記事をご覧ください。
Q5. 発酵度と焙煎度は何が違いますか? 発酵度はお茶の種類や香り・味わいの方向性を、焙煎度はコクとキレの強さを決める要素です。
Q6. 同じ台湾茶でも農家によって味が違うのはなぜですか? 茶葉の状態を確認しながら工程を進める判断が農家・茶師ごとに異なるためです。
Q7. 製茶ではなぜ夜中まで作業することがあるのですか? 茶葉の香りの変化を見逃さないよう、確認を続ける農家があるためです。すべての農家に共通するわけではありません。